エイズウイルスにも独特な構造のタンパク質を作る遺伝子があるので、その部分だけを分離してベクター・ウイルスに組み込む。
これを免疫システムの近くにある細胞に感染させてやると、エイズウイルスの存在を知らせるタンパク質が作られる。
免疫系に″エイズウイルス来襲″の警戒信号が出されたわけだから、担当するTリンパ球は防衛力の増強に力を入れることになる。
その結果、うまくすればすでに感染しているエイズウイルスをも排除する力が出る。
排除するまではいかなくても、ウイルスの増殖は抑え込めるだろうという発想である。
「具体的には、エイズウイルスの殻を作っているタンパク質の遺伝子を利用します」と高月氏は説明する。
エイズウイルスは遺伝子の構造を変えるのが速く、研究者が解析したころには別の構造の遺伝子を身につけているという特徴がある。
つまり、ウイルスが作るタンパク質の構造がどんどん変わるために、彼らの正体を免疫系に認識させにくく、ワクチン開発などが成功しないといわれている。
そのなかでは、この外殻タンパクの構造は変わりにくいために、″エイズウイルスの看板″としては最適だといわれる。
そんなことから、外来遺伝子として選ばれているのだ。
「この遺伝子をレトロウイルスのベクターにもたせて、筋肉注射として体内に入れる。
すると筋肉の細胞などに感染して、発現するとエイズウイルスのタンパク質が体内で作られることになります。
これに免疫系が反応すると、攻撃力のある細胞傷害性Tリンパ球が大量に発生して、エイズウイルスに感染した細胞を破壊する。
その繰り返しによって、エイズウイルスの増殖が抑えられるのである。
感染者にたいする遺伝子治療になるのは、このような理由からである。
「しかし、キャリアなら必ず効果があるといえるようなデータも、アメリカを含めて、まだ出ていません。
したがって、この遺伝子治療は治療というより実験、はっきりいえば人体実験なのです。
そのため、参加してもらうキャリアの人には事情をはっきり認識してもらうよう、十分なインフォームド・コンセント(治療法の説明と了解)が必要になります。
エイズは命にかかわる病気であるうえ、他に効果のある治療法がないという、遺伝子治療を行ってよい条件に適合している。
そのため、じっくりと時間をかけて効果を確認していきたいと思っているのです」。
なにしろ、感染からどのくらいたつと発病するかといったデータもないなかで、発病を抑える効果を調べようというのだから、そう簡単なテーマではない。
待望のパートあれこれといえばココ、パートあれこれで自慢しちゃおうよ。